遺言書の検認手続き

遺言書の検認手続きとは

検認とは

 検認とは、遺言書が偽造や変造されることを防ぐために家庭裁判所が行う手続きのことを指します。具体的には、遺言書の形状や内容、加除訂正の箇所、日付、署名などが確認されます。検認は遺言書の有効・無効を判断するものではなく、相続人に遺言書の存在およびその内容を公式に知らせる手続きです。検認を適切に行うことで、相続手続きが円滑に進む環境が整います。

検認が必要な遺言書の種類

  続いて遺言書の方式ですが、大きく以下の3種類に分けられます。

  • 自筆証書遺言: 遺言書の形式に沿って自筆で作成をした遺言書
  • 秘密証書遺言:遺言書の内容が相続人に明かされていない形式の遺言書
  • 公正証書遺言:2人の証人立ち合いの元、公証人の面前で遺言書の内容を確定していく遺言書

 公正証書遺言は公証人によって作成されるため、検認手続きは不要ですが、自筆証書遺言、秘密証書遺言については遺言書の検認手続きが必要となります。

検認手続きの流れと注意点

 検認手続きは以下の流れに沿って進みます。

  1. 遺言書を発見した相続人または保管者が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認申立てを行う。
  2. 裁判所が相続人全員に対して検認期日の通知を送付。
  3. 検認期日には申立人が遺言書を提出し、裁判官が遺言書を確認する。封印されている遺言書は家庭裁判所で開封されます。
  4. 検認が完了すると「検認済証明書」を遺言書に添付するための申請を行い完了します。

 検認をスムーズに行うためには、必要書類の準備が欠かせません。また、申立人が検認期日に出席できない場合も進行しますが、立会いが推奨されます。検認の手続きに取り掛かるまで通常数週間から1ヶ月かかるため、早めの対応が重要です。これにより、相続手続きが前に進めるようになります。

検認を怠ることによるリスク

 遺言書の検認を怠ると、相続手続きの進行が阻害されるだけでなく、意図的に遺言書を改ざんされたり、遺産分割が遅延するなどのトラブルが発生する可能性があります。また、封印のある遺言書を家庭裁判所の許可なく開封すると、最大5万円以下の過料が科される場合があるため注意が必要です。検認を経ずに手続きを進めることは法律違反となるため、適切な手続きを確実に実施しましょう。

遺言書開封の適切なタイミング

 遺言書が封印されている場合は、家庭裁判所での検認期日まで開封は行わないようにする必要があります。開封は裁判所で行われるため、遺言書を発見した場合は速やかに家庭裁判所へ申し立てを行い、通知された期日に開封を進めるのが適切です。なお、事前に開封した場合、法的な問題やトラブルが発生する恐れがあるため注意が必要です。

検認は遺言の効力を証明するものではない

 検認について誤解されやすい点として、検認=「遺言書が有効」ではない、という点が挙げられます。あくまで検認に遺言が有効であることを証明するものではないことに注意しましょう。。

 遺言書の検認は、あくまで「遺言書の存在と今の状態」を確認するものです。それ以降の偽造・変造を防ぐことが目的であり、遺言書の検認と「遺言書の内容が有効か無効か」は全く別物です。

 「この遺言書は無効である」という主張をしたい者がいる場合にはには、遺言無効確認の話し合いや調停・訴訟を行う必要があります。

法務局の自筆証書遺言保管制度について

 前述のように自筆証書遺言については通常、相続開始後、遺言について検認手続きを行ったり、遺言書の形式に沿わない遺言の作成によって無効になるリスクがありました。

 そこで、法務局では「自筆証書遺言の保管制度」を制定し、自筆証書遺言のデメリットを解消する制度として利用が出来るようになりました。法務局に一定の手数料を払うことによって、自筆証書遺言を保管してくれるというものです。

 これにより、自筆証書遺言の偽造リスクや紛失リスクが軽減されるようになり、また、遺言書の形式のチェックを行ってくれるようになったことで、法務局に保管されている自筆証書遺言については相続開始後の遺言の検認についても不要となりました。自筆証書遺言のデメリットが軽減されることで、より遺言を残しやすい環境を作ったものと言えます。

 ただし、この保管制度に関しては、あくまで形式のチェック、検認の不要というもので、遺言書自体の内容の有効性を確認してくれるものではありません。遺言書の内容については関与しないものとなっています。法務局のホームページでも、「遺言書の内容についての相談はできない」と明言されています。

 公正証書遺言は手間と費用はかかりますが、公証人を立てて遺言書を作成する点において最も信頼性が高い方法であることは変わりありません。より手軽に残しやすくなった自筆証書遺言にて作成するか、遺言の実効性がより高い公正証書遺言にて作成するかは依頼者の希望によって使い分けをすることが望ましいと言えます。

PAGE TOP